経済分析
Dec 31, 2024

【2025年ドル円展望】 日銀利上げのタイミングとトランプ政権

2024年も残りわずかとなりました。

2024年は相場の転機となるようなイベントがたくさんあり、トレーダーにとってはチャンスが多い1年となったと思います。

  • 日銀による17年ぶりのマイナス金利解除(3月)
  • ゴールデンウィークの為替介入(5月)
  • 2回目の為替介入(7月上旬)
  • 日銀による利上げの実施(7月末)
  • ブラックマンデーを超える日経平均株価の大暴落(8月上旬)
  • 米大統領選でドナルド・トランプ氏が圧勝(11月上旬)

2024年のドル円相場を振り返ってみると、概算ではありますが、78円分(7万8000Pips)の変動しています。1年を俯瞰すると、約16円程度の円安となっており、2024年年初と比較して約11%の円安水準になっています。

この記事では、2024年のドル円相場の振り返り、そして、2025年のドル円相場で特に重要となるファンダメンタル要因を解説していきます。

2024年のドル円相場:3つの転換点

【画像1】

2024年のドル円相場を大きく動かした要因の1つが、「日銀による政策金利引き上げの期待感」でした。市場が期待する利上げ期待と実際の政策にズレが生じたとき、大きく円安相場へと傾きました。(番号1)

https://www.threetrader.com/jp/blog/yen-depreciation-jul-2024

実際に日銀による利上げが実施されると、日経平均株価が大暴落。ドル円も日経平均株価に連動して円高が進みました。(番号2)

https://www.threetrader.com/jp/blog/usd-to-jpy-mid-2024

2024年9月下旬から11月にかけて「トランプ・ラリー」が出現しました。

経済政策を優先する政策を打ち出すトランプ氏の優勢が報道で伝えられ、米株価は連日最高値を更新。為替相場もドル高優勢となり、ドル円は再び上昇に転じます。(番号3)

2024年11月の大統領選で当選したのは、ドナルド・トランプ氏です。

トランプ氏は経済を優先する政策を打ち出し、全米で支持されて当選しました。上院・下院の議会を全て共和党が制する「トリプル・レッド」を実現し、トランプ氏の政策実現性が高くなっています。

当初は、ビットコインをはじめとする暗号資産への規制緩和への期待、経済対策の実現性への期待からドル高が急速に進み、ドル円相場も2024年9月の139.57円から156.75円へと円安ドル高となりました。

日銀の利上げはいつ実施されるか

日本銀行は2024年12月18日~19日に金融政策決定会合を開催し、追加利上げを見送りました。総裁会見では、見送りの理由として以下の2つを挙げました。

・トランプ次期政権による日本経済への影響

・賃金上昇の継続性の確認

トランプ政権の政策とドル高

トランプ2.0(第2次トランプ政権)の主な政策は、以下のとおりです。

・追加関税の発動(中国・メキシコ・カナダ)

・移民政策の厳格化

・減税対策

などが挙げられます。

トランプ政権の政策(追加関税や減税)はインフレを再燃させ、米FRBが利下げを停止し、場合によっては利上げに転じる可能性を高めます。

米FRBが利上げに転じれば、ドル高圧力を生む要因となります。

一方で、政策の不透明感により一時的なリスクオフ相場が発生する可能性もあります。

日銀は春闘まで動かない可能性

物価の上昇は日銀の想定どおりに推移しているという認識です。

一方、「賃金の上昇が継続するか」という点について、より丁寧に確認する必要があるという認識を示しました。

賃金の上昇の継続性を確認するための指標として、総裁が例示したのは「3月の春闘」です。春闘とは、労働組合と企業側との賃金に関する交渉のこと。2024年は賃上げ率が5%となり、日銀の利上げを後押ししました。

日銀金融政策決定会合

スケジュールを確認すると、1月24日の時点では、トランプ政権が始動したばかりであり、春闘の結果もまだ分からない状況です。よって、1月の日銀による利上げは、困難だという見方が拡がっています。

日銀が利上げに動く時期は、春闘の結果次第と考えられます。トランプ政権の政策方向性も影響し、2025年3月が有力なタイミングとなるでしょう。

2025年のドル円相場:日米金利差の動向が焦点

2024年9月に米FRBは利下げサイクルを開始し、3回連続の利下げを実施しました。

また、日銀が追加利上げに動くのではないかという思惑が強まったため、同年11月中旬~下旬にかけては一時的に円高が進む局面も見られました。

2025年も、「日米金利差が縮小するかどうか」がドル円相場に大きく影響すると考えられます。

下記は、米インフレ率、失業率、政策金利のグラフです。

【画像2/米CPI・失業率¥・政策金利の推移】

2024年3月から夏ごろにかけて米国のインフレ率は低下しており、8月をピークに、失業率が上昇しています。政策金利の引き下げが続いていましたが、2024年9月に米インフレ率が底打ちし、やや反発しています。

米経済は予想以上に堅調で、2024年9月にはインフレ率が底打ちしました。これにより、FRBが政策金利を引き下げる余地は限られており、慎重な利下げが続く見通しです。

FOMCメンバーのドットチャートによると、2025年の利下げ予想回数は3回前後で、米政策金利は現在の4.25%から3.75%程度までしか下がらない見通しです。

【画像3/ドット・チャートによる金利予想中央値】

上記のグラフのとおり、米利下げはゆっくりと実施される見通しです。2025年末で3.75%、2026年末で3.25%、2027年末で3.0%と予想されています。

一方、日本の政策金利は現状0.25%で、日銀による利上げは早くても「春闘の結果が出る2025年3月以降」という予測が主流です。

【画像4/日米政策金利差】

上記の画像では、2024年12月時点で日米金利差が4%程度あることが理解できます。

こうした状況では、米国の金利が高止まりし、日本の金利が依然として低水準にとどまるため、日米金利差が思ったほど縮小しない可能性があります。

結果として、ドル高・円安傾向が続く展開となりやすいでしょう。

月足テクニカル分析

【画像5】

月足にフィボナッチ・エクスパンションを描画してみます。

起点とするのは、ドル円の最安値である2012年2月の76.02円です。大規模金融緩和によって、円売りドル買い介入が実施され、通称「アベノミクス」がはじまりました。

月足チャートを見ると、フィボナッチエクスパンションが機能していることが確認できます。61.8%、100%のどちらも反応しています。2024年12月は100%に該当する150円付近で反発し、再度最高値更新にトライしようとしている状況です。

2025年の上値目標は、直近高値である161.95円と予想します。

目標値として活用されるフィボナッチエクスパンションの161.8%に該当するのは181円付近です。

RSIは61付近なので、それほど相場は過熱しておらず、順調な上昇基調であるといえるでしょう。

円高要因となるのは、政府による為替介入と日銀の利上げです。

為替介入は米国と事前に連携する必要があるため、簡単には実施できません。日銀による利上げは春以降になると予想しています。

1月末までに日銀が利上げを見送る場合、ドル円が162円を目指す可能性が高まります。一方、3月の春闘で利上げ期待が強まれば、150円台半ばまでの調整も想定されます。

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ぜひ相場分析の参考にしてみてください。