ゴールドは2022年11月から上昇基調になりました。
2023年10月から2024年10月までの約1年間、ほぼ一直線に上昇し、2024年10月までの1年間で1000ドル近くも価格が上昇しています。
2024年10月30日に2789ドルの史上最高値を記録しました。期間設定14のRSIが82まで上昇し、さすがに利益確定売りが強まって、執筆時点(2025年1月)では、2665ドル付近まで下落しています。
ゴールドは歴史的に「安全資産」としての需要が高まるときに、買われる傾向があります。近年では、世界中の中央銀行がゴールドを積極的に購入しており、特に中国人民銀行は2022年11月~2024年4月まで18ヶ月連続でゴールドを買い増ししています。
中国以外にも、特に新興国で金購入の動きが強まっています。
こうした中央銀行によるゴールド買いも、ゴールド価格の上昇要因の1つと言えるでしょう。
ゴールドの3つのファンダメンタル
この章では、ゴールドのファンダメンタル要因をまとめてみます。
主に3つあります。
・安全資産として需要が高まる
・米金利の下落が期待されると買われる傾向がある
・各国の中央銀行による継続的な購入
安全資産としてのゴールド
地政学リスクが高まったとき、経済不安が投資家の間に広がったときに、投資家は資金を「安全資産」と呼ばれる通貨・銘柄に移動させようとします。
ゴールド(金)は、経済危機になったときも、価値が変化しにくく、金自体に価値があるため、「安全資産」と呼ばれています
また、どの国家にも依存しない「無国籍銘柄」であるため、地政学的リスクや通貨不安時の避難先となりやすく、中央銀行も外貨準備として保有しています。さらに、株式や債券と異なる値動きをするため、ポートフォリオのリスク分散にもなります。
これまでも、地政学不安が高まったときに、ゴールド価格が急騰した例があります。
上記の1番の時期は、2023年10月です。イスラエルを含む中東紛争が勃発し、ゴールド価格が急騰しました。1800ドル付近で推移していましたが、勃発後に窓を開けて急騰。一気に2000ドルを超えて上昇していきました。
地政学リスクが高まり、不安が拡がると、ゴールドは買われる傾向があります。
米金利の下落期待が高まったとき
ゴールド(XAUUSD)には「金利」がつきません。そのため、米ドルの金利が上昇すると期待されているときには、ゴールドから資金が流出し、米ドルが積極的に購入される傾向があります。
金利が高い銘柄に資金は流れる
ゴールドには金利(利息)がありません。そのため、米金利が高いとき、投資家は利息を得られないゴールドよりも、米ドルを保有する傾向があります。米ドルを保有して銀行預金や債券で運用すれば、利息収入が得られるためです。
一方で、米金利が下がると、銀行や債券の利息も減少します。このような状況では、「利息がなくても価値を維持できるゴールドを買おう」と考える投資家が増加します。
反対に、米国の金利引き下げが期待されるようになると、米ドルが売られ、ゴールドが積極的に購入されるようになります。
各国の中央銀行による継続的な購入
2022年からのゴールド価格上昇の背景には、各国の中央銀行による継続的な購入があります。特に中国によるゴールド買いが顕著です。2022年11月に1980トンだった金準備高が2024年12月末には2280トンとなっています。わずか2年程度で300トンの増加です。
各国の中央銀行が金準備高を増加させる狙いとしては、安全資産やドル依存からの脱却があります。特に、中国は米国債の割合を減らし、金準備高を増加させています。
ゴールドが下落局面になると、各国の中央銀行が購入するという流れがあるため、押し目安値は買われやすくなっています。
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2025年はどうなる?ゴールド相場の展望
2025年1月20日、トランプ大統領が就任します。これが2025年最大のイベントとなるかもしれません。
トランプ大統領が掲げる関税政策によって、米国と各国の間に緊張状態が発生する可能性が高まります。緊張が高まれば、ますます世界中の中央銀行が金準備高を増加させるでしょう。
一方、トランプ大統領の公約であるウクライナ紛争の停戦、イスラエル・パレスチナ紛争の停戦が実現すれば、安全資産であるゴールドは大きく売られ、米ドルが上昇する可能性があります。
2025年のゴールド相場に関係する2つの要因を順番に見ていきましょう。
- 米FRBの金融政策
- トランプ政権の政策
米FRBの金融政策
緑:米政策金利
赤:米失業率
青:米インフレ率
米政策金利ですが、執筆時点(2025年1月中旬)で4.25%~4.5%となっています。2024年9月から3会合連続で利下げを実施しています。先ほども解説したとおり、米金利の下落期待が高まると、ゴールドは買われやすくなります。
ただし、2024年12月の米雇用統計が非常に良好な結果となり、失業率も低下。他の米経済指標も強めの結果が相次いでいるため、米FRBは当面、利下げをしないのではないかと市場は予想しています。
米金利が高い状態が継続すれば、米ドルを保有しようとする投資家が増えるため、ゴールドはなかなか上昇できないでしょう。他の要因で上昇するとしても、ゆっくりとした上昇となりそうです。
トランプ政権の政策で安全資産買い?
トランプ政権がまもなく発足しますが、世界経済に影響するのが関税政策です。
米国は世界最大の経済大国であるため、欧州・アジアなどは米国向けの輸出を多くしています。米国外からの商品に対し関税が掛かると、販売価格が上昇し、外国製商品は売れにくくなります。
トランプ政権が関税政策を強化すると、同盟国であっても緊張が生まれます。第一次トランプ政権で問題となった米中貿易戦争も再燃する可能性があるでしょう。
安全資産であるゴールドが買われやすくなるかもしれません。
外国製商品の値段が上昇すれば、米国内のインフレ圧力が高まる要因となります。インフレ率が上昇すれば、米FRBは金利引き上げを余儀なくされるというシナリオも考えられます。米金利が高まれば、ゴールドは下落圧力を受けます。
トランプ政権が実施する関税政策は、安全資産買いという上昇要因と、インフレ圧力が高まり金利上昇という下落要因の2つを生み出します。ゴールド相場は複雑になる可能性があるため、十分注意する必要があるでしょう。
ゴールドの月足分析
ゴールドの月足チャートを分析します。
フィボナッチリトレースメントを描画します。
起点とするのは、2015年12月です。第1波の高値である2020年8月、押し安値を形成した2022年10月の3点を結びます。
100%付近に該当するのは2650ドル付近です。動きを分析すると、2024年11月は2760ドルから2535ドル付近まで下落しましたが、2650ドルで終値を迎えています。執筆時点では2685ドル付近で推移しており、100%フィボナッチラインが意識されているといえるでしょう。
移動平均線は、上から順番に、12ヶ月移動平均線(青)、24ヶ月移動平均線(オレンジ)、36ヶ月移動平均線(赤)と並んでいます。短期から長期移動平均線が順番に並ぶパーフェクトオーダーを形成しており、上方向に向かって口を大きく開けています。
期間設定12のRSIは75.4付近で推移しており、過去1年間のローソク足の値動きで75%は上昇の動きをしていると分かります。RSIが70を下回ると、反転(もしくは大きめの調整)のサインとなりますので、注意してください。
過去最高値は2790ドル、直近安値は2583ドルです。当面は、この2つを上抜け・下抜けするかに注目しましょう。
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